雅塚学院はどこにでもある普通な学園。
その学園に通う主人公・曽根崎渉は、どこにでもいるような普通な学生。
すでに季節は夏を終えて、秋を迎えようとしている中で、一人の転校生がやってくる。
その転校生の名前は早雲寺花蓮超がつくほどの有名店を構えるトップ財閥の一人娘だった。
「ちょっとあなたたち!少しは静かにしなさいよっ!」怒声を荒げる一人の女によって教室は静まり、生徒たちの視線はその子に集まった。
「教師の声も聞かずに勝手なことをして、恥ずかしいとは思わないのっ!」問いかける彼女の言葉に声を発する生徒はいない。
というか、できるわけがない。
(も、もしかして、転校生っていうのは……彼女のことか?)「ちょっと聞いてるの!曽根崎!曽根崎渉!」「………………はあ?」突然名前を呼ばれたことに間抜けな声が上がる。
が、彼女は確かに俺を見つめてくる。
生徒たちも今度は俺に視線を向ける。
……さすがに恥ずかしいな。
「あなたはなにボーーッとしてるのよっ!」「……いや、そんなことを言われても──はあ?」なんで俺、怒られてるんだ?しかもかなり怒りを買ってるみたいなんだが──「……あなた、何も覚えてないの?」「覚えている……?いや、何も」なんのことを言っているのか?分からないにしても、少なからず俺は彼女のことは知らない……と思う。
「本当に何も覚えていないの?」「ああ、覚えてない」「絶対?」「絶対」「嘘ね──ごまかしても無駄なんだから」……なんなんだ?こいつ。
それから、普通な学園は、少しずつ普通ではなくなっていく……?