「おつかれー!」「じゃ、またなー」いつもの部活仲間といつもの場所で交わす挨拶。
方角の違う僕は、部活の練習で火照った体を、心地よい夜風ですずしみながら一人夜道を歩く。
──そんなに急いで帰っても、誰もいないしな…僕の両親は、今、出張に出ている。
父親は一人でいいと言っていたにもかかわらず、母親は「直道は一人でも大丈夫よ!」と言って、父親についていってしまったのである。
ま、観光目的だとは思うけど…初めての一人暮らしで、最初は戸惑ったが、今では結構、堪能している。
──今日は、夕飯、何を食べようかな…──昨日は、何食べたっけ?──あ、あの番組、録画したっけ?ぼんやりと考えながら歩いていた僕の足に、一つの影がのびる。
そこには、煌々と輝く月を背に、一人の男が立っていた。
武士のような佇まいを漂わせるその男は、冷たく言い放つ。
「余の名は謙信。
不知火謙信だ」「顔を見られてしまった以上仕方がない……己の運命を呪うのだな」僕はその男の言葉を聞きながら、自分の置かれた状況を理解した。
――殺される――と、その時――かすかに届く鈴の音と誰かの……悲鳴?……。
「あ~れ~!!」満月が輝かしく光り、何かが、僕と男の間めがけて落ちてくる。
ドコーンッ!!!激しい衝撃音、土煙にうっすら浮かぶ人影。
その人影は、女の子のようだが、その顔には、三枚の般若の面が……。
何がなんだかわからず、立ちすくむ僕の頭の中に、知らない女性の声が響き渡る。
『――天夢ちゃん、天夢ちゃん聞こえるかしら~』『――もしかすると、この方が天夢ちゃんに力を与えてくれる地球人かも知れませんわ』すると突然、天夢と呼ばれた女の子が僕に近づき「さあ、私の手を握ってください」戸惑いながらも、彼女の手を握り締めると……。
「武装変化(ぶそうへんげ)!!」天夢の掛け声と共に、天夢の面が割れて、そして僕は……、彼女がまとう鎧に変化してしまった。
「瑞雲(ずいうん)呼びて龍が昇るとき、悪を殲滅(せんめつ)いたす。
夢と希望の使徒、昇龍戦姫☆天夢、只今見参!!」天夢は、全宇宙の美しい星を手中に収めようとしている不知火軍と戦っている戦姫だったのだ。
遠き世界からやってきた天夢と共に、平安界に続き地球侵略をも企てる悪から、地球を守る戦いが今始まる!