西暦200X年、現代日本――物語の舞台は歴史の面影と異国情緒が漂う港町「想土市」。
遡っては明治開国より舶来品を商いする大店「五藤商会」は、ここ想土において幅をきかせる地元の名士である。
五藤商会を取り仕切る五藤家5代目当主が、この物語の主人公“五藤公孝”だ。
彼は文明開化より刻を止めたような古めかしい屋敷――通称「五藤屋敷」に飄々と住まう。
屋敷にはこのほか、公孝の父で先代社長の“延近”、妹の“灯”とその夫で医師の“天道光太郎”、執事の“双葉”とメイド“のの”が日々顔をあわせていた。
背徳に満ちた物語の幕開けは、公孝が二人目の妻“紅子”と、養女“イヴ”を屋敷に迎える所から始まる。
昨年亡くなった前妻“小百合”に遠慮を感じながらも新しい生活への期待と不安に胸膨らませる紅子。
公孝の友人の娘であるハーフの少女・イヴは、実父の自殺という不運に見舞われ、五藤家に引き取られたのだった。
――彼女たちは知らない。
前妻の小百合を追い込んだ夫・公孝の陰惨な「性癖」を。
イヴの実父の死が、養父・公孝によって仕組まれていたことを。
名家・五藤家が、みな何食わぬ顔の下におぞましい欲望を隠し持つ、「呪われた血族」である事を――。