─私立三門学園─名家の子息たちの通う学園は今、生徒会総選挙──《選挙祭》に沸きに沸いていた。
それもそのはず、この学園を統べること──それはすなわち、卒業後の勢力争いに大きなリードをつけることになるからだ。
本編の主人公──石動兵馬もまたそこに出馬し……などということはなく、ただ人に頼まれるまま、祭りの出店を手伝い、チラシを配り、そして雑多な用事を押しつけられていた。
僕はこっちのほうが楽しいから──しかし、そう口にできる平穏な日常は、その日の午後──立候補者の演説の時に大きく変わる。
私はこの学園に自分の《王国》を創ってみせる──!壇上に現れた見慣れぬ少女──紅院薫子の言葉により、会場に満ちる怒号と失笑。
張り詰めていた緊張は混乱に変わり、会場はたちまち喧騒に包まれる。
そしてその日の夜──兵馬の寮の部屋に現れた薫子は、自分と彼が許婚の関係にあると告げる。
そんな彼女を睨むのは、彼の実家から寄越された護衛の少女──城前叢。
怒気を隠さない叢に、薫子はまた不敵な笑みを濃くする。
突然に現れた少女と、なし崩し的に巻き込まれた選挙戦、そして勃発しつつある恋の三角関係──かくして兵馬の新たな日々が始まった。