季節は6月……梅雨が明けたのはいいが、今年もまた暑い夏がやってくる。
そもそもこの深澤(ふかざわ)町は、スキーリゾートとしては、ここ数年でそれなりにメジャーになってきたが、しかし、それも冬場の雪が降っている間の事。
夏場はただの、な~んにもない田舎町と化すのだ。
俺は「高原裕次郎(たかはらゆうじろう)」、その深澤に住む深澤学園の2年生。
ある日、オヤジが急に「しばらく家を空ける」と言いだした。
ウチの実家は観光客向けの小さな温泉宿をやっているのだが、女将でもあるウチの母親が、シーズンの終わり頃に過労で倒れてしまったのだ。
体調も今でこそだいぶ良くなってきたが、がむしゃらに頑張ってきたこの数十年間を振り返って、夫婦二人で静養も兼ねた長期旅行に行ってしまった。
これ幸いと、命の洗濯を決め込んだ俺の前に立ちはだかるヤツがいた。
宮崎あかり。
俺と同じ学校に通う、幼馴染みだ。
オフクロのヤツ、あかりにあれこれ頼んで置いたと言うが……あんな凶悪な女に面倒を見て貰うなんて、まっぴら御免だ!なんて思っているウチに、両親はさっさと旅行に出発。
秋口まで帰ってくる気は無さそうな気配だ……そして数日……あかりのお節介をのらりくらりと断ってはいるものの、さすがに家の中が荒れてきた。
う~む、なんでたった数日でこんな状況になるのか俺……と、思っていた矢先に学園から帰ると、荒れていた筈の家の中が妙に綺麗だ。
なぜ?と不可思議に思っていると、台所から物音が。
……そこに居たのは……