音色が、空に溶けてゆく。
一学期の終わりと、夏休みの始まりを告げる鐘の音。
青嵐女学館に入学してから三回目を迎える、特別な一日の下校チャイムだ。
その鐘の音に、校門へと流れて行く学生たちの姿。
誰もが、同じ方向に向かって……ふと、真理奈の中に胸騒ぎに似た、妙な気持ちが広がった。
それは、ゆるやかに…… だが、確実に訪れていた変化。
「これが、最後なんだね……」三度目になる、夏の訪れ。
去年も、一昨年も、同じように過ごしたこの時間。
でも、来年は――もう来ない時間。
そんな、当たり前の現実。
「卒業したら、みんなバラバラになっちゃうのかな?」ぽつりとこぼれた言葉は、真っ白な陽射しに焼きつけられた、青い影みたいに心にくっきりと残った。
何もしないまま、何も残らないまま、ただ時間だけが過ぎてゆく…。
それでも、形のない想いを、形にしたいから。
「バンド、やりたいね……」そうして、少女達は最後の季節を歩んでいく。
想いを「音楽」に乗せて。