主人公・佐々木忠の勤めるベンチャー企業は、一人のやり手社長の力により、目下業界を躍進中である。
今日も上司であり社長の妻である「蛯原倖」から、耐え難い罵声を浴びせられていた。
腐りながら帰る道すがら、大きな屋敷の門で夫を出迎える妻を見かけた。
その女こそ、かつて忠が憧れていた七飯玖玲亜だった。
玖玲亜をモノにした男を睨みながらも、忠はそれを忘れて、とにかく自分の部屋に帰ろうとした。
だがその途中遭遇したのは、かつての幼馴染・米谷つぐみが新婚早々マンションに引っ越す光景。
忠の住むワンルームマンションから、目と鼻の先にある新築マンション。
その一室へと夫と一緒に荷物を運び入れるつぐみの姿が、血走った忠の目に映っていた。
なぜ!! なぜ幸せになるのは、俺の周りの奴ばっかりなんだ! どうして俺じゃないんだ!嫌味か? 幸せになれない俺に、自分の幸せ見せ付けて、さらに幸せになろうってのか!?善人面して、そうやって自慢して、人より高いところに昇るつもりか!!そうか……それなら俺も幸せになろう。
あいつらの幸せを奪って、幸せになろう。
断じて、あいつらから、幸せを分けてもらうんじゃない。
あいつらのちっぽけな幸せなんか欲しくない。
あいつらから幸せを奪い取って、そしてあいつらの、幸せを奪い取られた瞬間のその顔を見て、俺は幸せになろう。
呆然と見上げるあいつらの顔を見て、俺は幸せになる!