僕―――岩清水公平がこの学園に赴任してきて早3年。
新米と言うほどではないが、年配の教師が多いこの職場では、僕なんぞヒヨッ子だ。
今までは重要な学年を担任に持つこともなく、適当に授業をこなしていればいいだけだったのに……今年の進路指導担当に抜擢されてしまったのだ。
とはいっても、別に特別な人望があったわけじゃない。
思えば毎年の進路指導担当は、誰もが「面倒だから」と言って引き受けたがらなかった。
今年は若くて立場が弱い僕に押しつけようと、白羽の矢が立ったに違いない。
経緯はともあれ、決まったからにはやるしかない。
人様の人生を左右する仕事なんて……と思ったものの、ことすれば裏口入学の斡旋だ袖の下だ、とそれなりにオイシイ役得だってあるかもしれないしな。
そう思った途端、まさかあんな役得が舞い込んでくるなんて……。