俺は俊之、滝川学園の2年生だ。
特に部活はやっていない。
というか厳密にはやっている暇など無い。
じゃあ何をしているのか?と言えば、アルバイト……だ。
ありがちな小遣い欲しさのバイトなんかじゃあないぞ。
自慢じゃないが……俺はとっても貧乏なのだ。
貧乏と言っても、別に両親が借金作って逃げたとか、実は天涯孤独の身……とかじゃぁない。
両親はちゃんと揃っているし、おまけに妹までいる。
ついでにオヤジは大手商社の部長とかなんとかで、それなりに家は潤っている。
が、俺はとにかくそのオヤジとウマが合わない。
オヤジはとにかく仕事一筋で、家庭を顧みる事など全くしないタイプだ。
俺の本当の母親が病死した時も、仕事先から帰ってこなかった時には、子供心に殺意が芽生えた。
ちなみに今の母親は後妻さんだが……まぁ、義母の麻衣さんとは別に仲が悪い訳じゃない。
そんなワケで、俺はなけなしの蓄えを元手に安アパートを借り、アルバイトで食費や家賃を稼いでいるのだ。
本当は学校へも行かず本格的に働きたかったのだが……義母の麻衣さんがどうしてもと譲らないので、学費だけは出して貰っている。
そんな俺にも憧れの女性がいる。
3年生の先輩、藤崎若菜先輩。
美人で優しくて人望があって、おまけにお嬢様というパーフェクトヒロインだ。
しかし、俺と彼女の接点と言えば、同じ環境整備委員会のメンバーという一点だけ。
……そうだよ、俺が一方的に憧れてるだけだ。
そんなある日、俺は大荷物を抱えている若菜先輩を見かけ、早速手伝う事に。
聞けば千春先生に押しつけられた模様……う~む。
とはいえ、こんな事でも先輩との接点が出来る事は嬉しい。
そんな風に思っていたのだが……よろけた先輩を庇って、今度はこっちがよろけ……そのまま階段から転げ落ちる俺……いてぇ……。